立身中正
(りっしんちゅうせい) |
全身を前後左右に傾けたり偏ったりすることなく、まっすぐな姿勢を保つこと。「立如平准、活似車輪」=立つこと秤の如く(立身中正)、動くこと車輪の如し(連貫円活)。脊柱は、ゆるやかなS字状を描いてまっすぐではない。太極拳の姿勢は、虚領頂勁、含胸抜背、尾閭中正により、脊柱を伸ばす。
頭頂に糸をつけ宙に引き上げると全身がスーっと下に垂れ下がる。その姿勢(上肢)を腰・骨盤で受け、下肢(太もも)で支え、その状態を保つ。またその状態を保って前後に移動していく。
|
虚領頂勁
(きょれいちょうけい)
|
(領は首=頚部のこと、頂=頭のてっぺん)
頭・首についての要求を表した常用語で、首を緊張させないで自然にまっすぐ伸ばし、頭をまっすぐ支えあげ、下あごをわずかに引き込み、無駄な力を入れないで支えることが大切である。つまり、頭は司令塔であり、頭の向きが変化すれば全身の筋肉状態も変化していく。
しかし、「首をまっすぐ伸ばし、頭をまっすぐ支えあげ」にこだわりすぎると、逆に緊張してしまい、「立身中正」という身型と身法についての基本的要求動作ができなくなるので、「まっすぐ伸ばす」「まっすぐ支える」はどこまでも「緊張させない」「無駄な力を入れない」に注意することが大切である。
また、頭を傾けたり揺ったりすることは、気血の流通に影響するばかりでなく、武術としてみても危険であるから、やはり、どこまでも自然な状態を保つことが要求される。 |
沈肩墜肘
(ちんけんついちゅう) |
肩と肘についての要求を表した常用語で、肩関節をゆるめて開き伸ばし、鎖骨を持ち上げないようにすることが大切である。
肘も自然にゆるめて沈め、腕を前に出している時は肘窩(肘の内側)が上を向き、肘頭が下を向くようにし、肘頭は外側に張ったり、突っ張ったり、肘を曲げ過ぎたりしない。つまり、肘を沈めないと肩も連動してあがってしまう。また、肘を体の後ろに引き過ぎると、やはり、肩は上に、そして前に突っ張ってしまう。
以上の理由として、手法の動作において、勁力を無駄なく効果的に力点を伝えるためである。 |
含胸抜背
(がんきょうばっぱい) |
(胸のまわりをゆったりとさせ、背骨を反らさない)
胸と背中についての要求を表した常用語で、胸は無理に突っ張ったり、縮めたりしないでゆったりとさせ、自然に伸びやかに保つ(含胸)。
背中は脊柱をまっすぐに伸ばし、背中の皮を引き上げ、「沈肩」と強調させて肩甲部や後背筋部を左右に、下方に伸びやかに広げる。ただし、丸めて猫背にしない(抜背)。
また、「含胸」と「抜背」は互いに関連しているもので、背中の筋肉は両腕を伸ばして開く動作に伴い、できる限り緩めて伸びやかにし、同時に胸部の筋肉は自然に緩めて緊張させてはいけない。こうして胸に「含」の意味が具わり、背も「抜」の形になり、従って胸肋間の緊張を免れ、呼吸調節も自然になる。 |
円襠
(えんたん) |
(股関節・骨盤を外へ広げる)
両足の股関をアーチ状に保つこと。たとえば、ダムや橋がアーチ形なのは、強い負荷に耐えるのに有効であるから。それと同時に、両足の股関節を丸くアーチ状にすることで、上半身の重量をしっかり支えることが大切である。 |
鬆腰収胯
(そんやおしょうこわ) |
(胯=股関節)
「立身中正」「尾閭中正」「円襠」の基本姿勢から、腰を常にゆるやかな状態に保つようにすることが大切である。
太極拳の動きや力は、すべて腰を軸とし、また腰を中心として発生することをよく理解しなければならない。(鬆腰)
前後左右に移動していく時、上肢と下肢をつなぐ股関節が常に適切な角度に調節されることにより、「立身中正」を保つことができる。股関節の引き込みが足りないと上肢は反り、また引き込みすぎると臀部が後ろに出てしまう。(収胯) |
尾閭中正
(びろちゅうせい) |
(尾閭=尾骨)
腰をゆるめ、尾骨の先端を内側にわずかに巻き込むことにより、肛門を真下に向け、臀部を後ろに突き出さないようにする。また、「立身中正」と併せて頭頂から脊柱の下までまっすぐ通して身体の縦軸を作るように意識する。ただし、巻き込みすぎて、「収胯」の要求から外れないように注意する。 |
| 用意不用力 |
武術太極拳についての一見矛盾した用語であるが、これはその特徴をよく表現しており、意(意識・意念)より多く用い、力をできるだけ使わないことによって、勁力(ちから)を得るところにある。
太極拳は身体の外形、内面双方の意味において全身運動である。つまり太極拳を「意識体操」とみることもできるが、それは太極拳が意識と動作、そして呼吸、眼法の一致した運動であるからである。
太極拳をする時には、気持ちを落ち着けると同時に楽にし、全身をリラックスさせ、余分な力を使わないで行う。このことによって気血の運行をよくし、脳(あたま)にとっては訓練であると同時に休息にもなる。 |
| 連貫円活 |
「連貫」とは、拳式や動作のつなぎの過程が中断したり途切れないで、前後につながっていくことである。
その特徴としては、主に各々の姿勢の調和した動作がつながっていき、動作が完成する節もあるが、その動作は決して滞ることはない。
「円活」とは、太極拳の動作を行う際、機敏に自然に順序よくつなげていくことを示している。
例えば、上肢についていくのは、手法の変化の過程で、腕を彎曲した状態(?勁)で固定したまま動かしていくのではなく、身体全体の動きに合わせてその形は変動していく。
また、下肢についても、いつも自然な彎曲状態を保つが、動作の過程においては、腰と脊柱で四肢の進行活動を導いていくようにすることが大切である。 |
| 一動全動 |
身体の一部が動けば、全身各部で動かない部分はない。
たとえば、定式動作からゆるめて次の動作に移行する時(初動)、まず腰をゆるめ、そのゆるみを手足の指先に到達させ、全身の筋肉をゆるめ、身体を動かしていくようにする。
また、野馬分?の定式から次の動作に移行していく時、後ろ足を曲げ身体を後ろに下げ始めているときに、手(腕)の動きが止まったままは不可。この時、手(腕)に大きな変動はないが、「緩めていく」という意味で「動いている」のである。 |
柔緩均一
(柔らかく、緩やかでむらが無い) |
太極拳はゆっくりとした動作を主とし、「柔」と「緩」は太極拳の動作の特徴であるが、ゆっくりする程良いというのではなく、ゆっくりし過ぎると気勢が散漫になってしまう。
「運勁如抽絲(勁力の運用は糸をつむぐが如し)」と言われるように、力はこわばらず、滞らず、速度は急に早くなったり急にゆるむことなく一定の平均速度(等速運動)を保ち、柔らかく緩やかでむらのないスムーズな動作が、太極拳に要求されている。
しかし、この柔和で緩慢な運動の流れの中には、当を得た重心と虚実の切り替え、そして身体のバランスと安定を保つことが要求される。 |
| 虚実分明 |
「虚」と「実」の運動自体は矛盾した要素を持つが、めいはりのある太極拳動作を行うことの要求を表現した常用語である。
全体の動作から見ると、おおよそ動作の定式に向かう過程を「実」とし、定式から次の動作に向かう過程を「虚」とする。
つまり「実」の動作や姿勢では、力を沈ませ充実させ、「虚」の動作やその過程では、軽く敏捷にして含みを持たせるようにする。
そして動作の中にこの虚実の変化を上手く結合させることにより、太極拳は軽く敏捷な、また沈着したものになり、同時にメリハリのある、生き生きとした動きを表すことができるのである。 |
| 動中求静 |
生き生きとした太極拳の動きではあるが、その動きの中に「心静」「体鬆」「気沈丹田」などの要求を満たしていることが大切である。
動と静・虚と実・剛と柔など対立・矛盾する両者であるが、この言葉には対立・矛盾の中に整合性・合理性があることを認識し、太極拳の運動の過程で両立・共存させていくということを理解し学習していくことが必要である。
「静中求動」「虚中有実」「実中有虚」「剛の中に柔を住まわせる」、「柔の中に剛を住まわせる」。このあえて矛盾した両者を両立・共存させる意味は、たとえば、「剛」「沈」「活」などが「硬」「重」「散」になることを避け、また「鬆」「柔」「軽」が「軟」「浮」などになることを防ぐことになる。
|
上下相随
(手足をばらばらに動かさない)
|
手の位置を定めた後に足の位置を定めるのではなく、手と足の動作と視線の変化を互いに調和させ、方向と位置の変化につれて全身の各部が止まることなく動き続け、動作の定式にいたる時、身体全体の動きが実の頂点に達して型を決めることが大切である。(上下肢と頭・目・呼吸を含む胴体との動きの調和)
たとえば、野馬分?の動作で、弓歩が先に完成し、手がまだ動いているのは不可。 |
| 気沈丹田
(気(空気・意識・気持ち)を下丹田(下腹部)に沈める) |
鼻から吸った空気をヘソの下(下丹田)に送るようにして膨らませ、吐く時は、体内の不純なものをすべて対外に放出させるような気持ちで吐き、下腹部を緩めへこませていく。(腹式呼吸)
※身体を仰向けに寝かせた状態で呼吸すると、誰でも自然に腹式呼吸(吸うとお腹が膨らみます)ができます。一度お試しください。 |
| 心静体鬆 |
「心静」(心が落ち着いている)と「体鬆」(体がリラックスしている)は太極拳動作の基本的要求を表現した常用語である。
「心静」とは、念頭から一切の雑念をできる限り排除することである。つまり、いかなる動作や姿勢の時も、心の中を常に安定状態に保ち、神経(意識)の各々が細部の動きの中まで注ぎ込まれ、武術太極拳に専念できるようにすることである。
「体鬆」とは、全身の筋肉・関節・靭帯と内臓の全てを自然にリラックスした状態にすることである。
しかしこの「鬆」をフワフワとして力がなく、弱々しいものとして身につけると、全身が弛緩し動作が萎えてしまうことになる。
そこで「体鬆」を正しく身につけるためには、気持ちを落ち着けると同時に全身をリラックスさせ(放鬆)、筋肉や関節に余分な力を入れないようにする(用意不用力)。そうすることにより、全身の筋肉状態が緩み、勁力も体の中から自然に生まれ、従って柔らかな動きの中に力強さを生み出すことができるのである。 |